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私が証券会社に入社した時の話です。
営業職に配属されましたが、「証券会社」と「営業」と聞くと、まずは信用が重要だと感じます。
お客様との信頼関係があってこそ、仕事が成り立つのです。
目次
証券会社に応募したきっかけ
証券会社の営業職に興味を持ったのは、求人サイトでの募集を見たことがきっかけでした。
証券会社は銀行と同様に華やかな金融業界のイメージがあり、自分には無縁だと思っていましたが、日本の大手証券会社が中途採用の契約社員を募集していることを知りました。
しかも、学歴や経験、年齢は一切問わないという条件でした。
基本給も生活に十分な水準で、証券マンという職業に対する憧れや、頑張れば頑張るほど稼げるという期待もあり、思い切って応募することに決めました。
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3段階の面接
まずはウェブからエントリーシートを提出し、書類審査を受けました。
これを通過すれば二次面接に進むことになりますが、実際の書類選考はかなり幅広いので、特別な理由がない限り二次面接に進めると思います。
正直、書類選考で不合格になったらどうしようと不安でしたが、わずか5日ほどで合格の連絡が来たときは驚きました。
二次面接
一次面接の後、二次面接は東京で実施されました。
交通費や宿泊費は自分で負担しなければならなかったので、東京から遠く離れた地方に住んでいる私にとっては少し厳しい出費でしたが、それでも証券マンになるために東京まで足を運びました。
二次面接内容
- 個人面接:15分程度の面接を二回
- 面接官:それぞれ一人
- 聞かれたこと:志望動機やこれまでの職歴
面接官はとても穏やかで笑顔が絶えない方だったので、「これは意外と良い結果になるかもしれない」と感じました。
しばらく待った後、二人目の面接官との面接が始まりました。
こちらの面接官は一変して、典型的な威圧感のあるスタイルでした。
一人目の面接官が私に付けた評価のシートをわざと私の目の前に置き、「君は転職で弊社を受けているようだけど、また辞めることになるんじゃないの?どんな環境になったら辞めるの?」と、答えに困るような質問を次々と投げかけてきました。
社会経験はそれなりにあった私ですが、さすがにこの言葉にはムッとしてしまい、「働く前から辞めることなんて考えていません」と返してしまいました。
その瞬間、「やっちゃったな」と感じました。
まさかの採用連絡
それから約1週間後、今度は支店の担当者から直接電話がありました。
「次はないだろう」と思っていたので、かなり驚きました。
支店に行けるかどうか、行ける場合はその日時について詳しく尋ねられ、面接の際の往復交通費は会社が負担するという条件も提示されました。
約束した日時に支店に行くと、担当課長と支店長との面接があり、その場で採用の知らせを受けました。
これには本当に驚きましたが、今振り返ると往復交通費が支給される時点で、すでに採用が決まっていて、面接は支店の幹部との顔合わせだったのだと思います。
訪問と電話による新規開拓の日々
無事に入社が決まり、入社式に参加した後は約2か月間の研修でした。
研修内容
本社スタッフによる集合研修
5日間ホテルに缶詰め→社内スタッフや外部講師による研修
全国の支店から契約社員として集まった営業チームは、性別や経験、年齢がさまざまです。
他の支店のメンバーとグループを組んで、いろいろな課題に取り組む中で、まるで学生時代に戻ったかのような楽しさを感じました。
その後の支店での実地研修も明るい雰囲気で進み、これなら意外と簡単にできるかもしれないと思いました。
証券営業には証券外務員の資格が必要ですが、資格取得のサポートが充実していて、同期全員が無事に資格を取得しました。
営業マンとしての勤務スタート
入社してから2か月が経ち、いよいよ営業マンとしての第一歩を踏み出しました。
研修で得た知識が全く無駄だったわけではありませんが、実際の業務はとにかく足を使い、電話をかけて新規顧客を獲得するという地道な作業が中心でした。
研修中は楽しいことも多かったですが、営業マンとして働き始めると、毎日さまざまな困難に直面しました。
その上、その時期は株価が下がり続ける厳しい状況で、新たに投資を考える人を見つけるのは容易ではありませんでした。
電話をかけるにも、個人情報保護が厳しくなっていたため、リストが限られており、訪問営業ではあっさりと断られることが多く、苦しい日々が続きました。
また、コンプライアンスが厳しくなっていたため、お客様に誤解を与えないよう特に注意が必要で、「絶対に儲かります!」というような表現は絶対に避けなければならず、リスクをしっかり理解してもらいながら商品を購入してもらうのは本当に大変でした。
最低保証の給料と週休2日は確保
証券営業というと「厳しい」「ブラック」という印象があるかもしれませんが、休暇に関しては週休2日がしっかりと確保されており、有給も自由に取得できました。
定時を超えた場合には残業代も支給され、食事補助などの福利厚生も予想以上に充実していました。
これは大手企業ならではの特権かもしれませんが。
給与面では、入社から2年間は最低保証の給与があり、その後は歩合制に移行しますので、最初の2年間でどれだけ顧客を獲得できるかが重要です。
新規の売上も大切ですが、顧客から預かる資産に応じてボーナスが支給される仕組みがあり、多くのお客様に投資していただければ、一定のボーナスが期待できるシステムでした。
営業職なので、訪問や電話営業をすることは苦になりませんでした。たとえ断られても、次に進むのが営業マンの常です。
営業の仕事で大変だったこと
最も苦労したのは、金融の知識が身について自分なりの相場観を持つようになった時期です。
リスクが高い商品や、自信を持ってお客様に勧められない商品がある一方で、会社が売りたい株や債券、投資信託を販売しなければならないという現実があります。
営業部から「この商品をこれだけ売るように」というノルマが課せられるため、そのノルマを達成するためには、自分の考えとは異なる商品をお客様に提案しなければならないこともありました。
時には、少し前に購入していただいた商品よりも新しい商品が良いと判断し、以前の商品の売却をお願いして新たな商品を購入していただく必要があることもありました。
そういった時の後ろめたさややるせなさとの折り合いをつけるのが、最も難しいことでした。
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お客様との信頼関係が一番の報酬
商品を購入してもらうのは、実際には簡単なことではありません。
個人のお客様が10万や20万単位で商品を買うことは稀で、通常は100万単位のお金が動くことが多いです。
中には、個人で1,000万や2,000万単位の購入をされる方もいますが、そういった方々が必ずしも余裕資金を持っているわけではありません。
退職金を少しでも増やしたいという気持ちで投資をされる方も多いのです。
もちろん、期待通りにいかずに損をする方もいらっしゃいますが。
まずは信頼されることが大事
お話を重ねて、納得の上で購入していただいた場合、たとえ損失が出たとしても、こちらを責められることはほとんどありません。
その後、どうすればよいか相談してくださることもあります。
そのような時、お客様との信頼関係を心から感謝していますし、中にはその後、一生のお付き合いをさせていただくお客様もいらっしゃいます。
私は現在、証券の業界を離れていますが、それでも人間関係を築いてくださるお客様が多く、その中で生まれた絆が私にとって最大の報酬だと感じています。
証券の世界を去った理由
4年後、私は証券業界を離れました。
売上はまずまず良好で、そのまま証券業界に留まっていれば収入も安定していたでしょう。
今でも投資は価値のある活動だと考えており、投資の世界に関わったことは全く後悔していません。
しかし、証券業界を去った理由は、金融をより広い視点で捉えたとき、運用するお金だけでなく、貯蓄や保険などの備えとのバランスを重視すべきだと感じたからです。
退職後は経験を活かしファイナンシャルプランナーの世界へ
そこで私はファイナンシャル・プランナーの資格を取り、金融全体を見渡したうえでお客様にアドバイスできる存在になりたいと考えたのです。
証券業界に身を置いたことで、お金の流れについて深く理解できたことは間違いありません。
また、その経験を通じて築いた人間関係のスキルは、今でも大いに役立っています。
この業界は苦労も多かったですが、それ以上に得るものがたくさんありました。