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ディレクターとプロデューサー
私は、アシスタント時代も含め、テレビ番組のディレクションに35年携わっています。
若い世代はそうでもないかもしれませんが、「ディレクター」と「プロデューサー」を混同されている方も多く、私も、まわりの人たちによく「プロデューサー」だといわれることがあります。
ディレクターとプロデューサーの違い
プロデューサー
端的に表現すれば、「お金」つまり「制作費」のことを考え続け、関わっている番組や映像作品で「いくら儲かるか」を考えて仕事をする。
ディレクター
儲けや採算は度外視してでも、自分が創りたいものを創ろうと仕事をする。
ディレクターとプロデューサーの仕事は、似て非なるスタンスで番組づくりに関わっています。もちろん、常識の範囲というものはありますが・・・
ディレクターの仕事を目指した理由
私がこの仕事を選んだ大きな理由は、単純にテレビが大好きだったからです。
あの不思議なテレビという箱の中で繰り広げられることに関わりたいという思いが、私の原動力です。
今の子供たちが「ゲームクリエイターになりたい」とか「ユーチューバーになりたい」と考えるのと、根本的には同じ気持ちです。
ただ、私は東京ではなく、地方都市でテレビディレクターとしての道を選びました。
フジテレビやTBS、テレビ朝日、NHKといった大手の放送局ではなく、地方の小さな制作会社でディレクターとして働き続けています。
長い間この仕事をしている中で、東京に出るチャンスがなかったわけではありません。
もちろん、直接大手の放送局に就職するような誘いがあったわけではなく、東京の大手制作会社で働く機会もありましたが、最終的には自分の判断でお断りしました。
テレビ番組に関しては、制作や著作権を持つのは放送局ですが、実際の番組の内容を作り上げているのは、いわゆる下請けや孫請けの制作会社です。
テレビ局にはプロデューサーがいて、彼らは下請けの制作会社を管理しながら、より良い番組を作るために努力しています。
もちろん、局内にはディレクターもいて、最終的な判断は局の方針に大きく影響されますが、下請け制作会社にも魅力があります。
取材先や情報源に近い立場にいることで、多くの人や物、情報に直接触れることができるのです。
「政治力」に影響されることも少なく、自分たちの信念を貫いていれば、自由に活動できる環境が整っています。
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ディレクターの収入は・・・
その代わりと言えるかは分かりませんが、収入の面ではビッグステーションのようにはいきません。
予測に過ぎませんが、キャリアが進むにつれてその差は広がり、私のような立場になると年収で100万円以上の差が出ると思います。
しかし、私はその年収の差を「生涯現役」でいられることの代償だと考えており、納得しています。
大きな組織では人事異動が避けられません。
好きか嫌いかに関わらず、現場から離れることもあります。
一方、小さな制作会社では、ディレクターとしての役割を生涯全うすることができます。
変化する世の中の最前線で、人や物、情報に出会えることは、報酬以上に幸せで楽しいと感じています。
ディレクターの仕事の大変さ
これからディレクターを目指す若い方々に伝えたいことは、「映像に関する知識を過剰に蓄えないこと」です。
ディレクターという職業には、国家試験や資格試験が存在しません。
そのため、特別な証明もないのです。
「私がディレクターです」と言った瞬間から、あなたはディレクターとしての一歩を踏み出すのです。
では、ディレクターの優劣はどのように判断されるのでしょうか。
それはすべて、「現場の責任を私が引き受ける」という覚悟を、番組全体に浸透させることができるかどうかにかかっています。
実際、そんな覚悟を持っている人はほとんどいません。皆が仕事を通じて専門知識や対応力、人間力を身につけ、それがディレクターとしての実力となるのです。
人としっかり会話をし、コミュニケーションを取ること、そして世の中の動きに対して敏感でいることが大切です。
深く考えなくても構いませんが、広い視野を持ち続けることが、年齢や時間に関係なくディレクターとしての力を示します。
得意な映像表現や専門分野は、実際に仕事をしながら試行錯誤して見つけていけば良いのです。
始める前から理想を追い求めすぎると、現実とのギャップに苦しみ、辞めてしまうことが多いと感じます。
これはディレクターに限ったことではありませんが、特に強く感じる点です。
そのため、「ディレクター」「おはようございます」「おつかれさまでした」「すみません」「お願いします」「ありがとうございます」といった言葉を、誰に対してもタイミングよく、しっかりと伝えられる人であってほしいと思います。
派手さは全くありません。利益も期待できません。
地道にものづくりをする職人と同じです。
でも、それが魅力なんです。
テレビというメディアを通じて、知らない視聴者の感情や発見を引き出す、心を動かす仕事。
それが制作会社の「ディレクター」です。
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